重層的非決定?

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2009年01月02日

■ テレビに出るのが勝ち組vs事務所が儲かっているからすべてよし

アンジェラスさんからいただいたコメントのお返事、長くなり、かつ論点として重要だと感じましたので、新規エントリを立てます。

「いつも新曲は出したら出しっぱなし、今年も沢山ライブやってチケット売れたからそれで良いみたいなアップフロント流の考え方」

それはそうなんですけどね(苦笑)。アップフロントのまずさはまずさとして、加護ちゃんサイドが慎重に事を進めている、というのも理解も共感もしていますよ。私が「待ってくれ」と思ったのは「自分だけテレビに出られて」という発言一点でして。

まずテレビタレントがテレビに出るのは当たり前で、それはそれで価値があるというのは全く否定しません。しかしテレビではない活動だって立派な芸能活動であって、テレビに出ないから駄目だ、という言説には辟易としています。それは「もっとテレビに出てプロモーションしなくては」という主張とは別のものです。私はもっとモーニング娘。として真っ当なメディア展開はすべきだとは思っていますよ。でもテレビに「出られない」今の娘。は価値が低いとも思いません。戦略としては下手だと思いますけど。

エントリに書いたようにモーニング娘。にとってテレビに出るのは「手段」として重要だと思います。しかしあくまで「手段」であって、目的ではない。加護ちゃんにとってはどっちが目的でどっちが手段かは分かりませんが、もし加護ちゃんがテレビ出演が「目的」なのなら、それはそれでいいと思います。思いますが、それはモーニング娘。とは別の芸能活動となるので、「自分だけテレビに出られて(出られない人たちに申し訳ない=出られない人可哀想)」というのは当たりません。そこを同一平面に並べてしまうのはテレビに出ている「バラドル」が「勝ち組」であって、舞台やライブ活動を主として活動している人を「負け組」呼ばわりする言説と同じ論理構造を反復していると思います。

いまのファン界隈言説は「テレビ出演」をするものが「勝ち組」なのか、「現場で稼ぐ」のがよいことなのか、という二元論で終始しているように思います。そして加護ちゃんの発言(あるいはそれを紹介した加護ちゃんファンの言説、というべきなのかも知れませんが)もそこにとらわれているように思いました。

まあ私の主張が後者に与しているように読まれるのはある意味仕方のないことで、私が応援している人が主として「現場」傾斜になっているというのが大きいのかなと。どうしてもそっち(活動方針というよりはその人自身)に肩入れする感じにはなってしまいます。ただそれだけでなく、アップフロント・ハロプロファン界隈では確かに後者が主流言説に見える部分もありますが、それ以外の場に出ると明らかに前者、「テレビに出ることこそが勝ち組」が主流言説に思います(ファンのやっている「ハロプロMVP」企画みたいなのだってテレビに出ている里田まいさんがMVPとされることが多いですよね。安倍なつみや松浦亜弥や娘。メンバーをMVPとするのは明らかに少数派でしょう)。私はむしろその主流言説のほうが仮想敵なのです。そしてその主流言説がアップフロント・ハロプロファン界隈でも席巻し、娘。落ち目、安倍なつみ負け組、みたいなことが反復されている、私はそちらの方に抵抗する言説を生産しようと思っているのです。

ちなみに界隈で流行の「アップフロントは偉大だ」「事務所が儲かればよい」一派なんて逆に相手にするほどの言説だとは私は認識していません。某ファンサイトで席巻しているように見えるだけで、言説としての力なんて全くないと思うんですけど。せいぜい事務所をすべて悪者にすれば事足りるというファン言説(まあ私も最近はどちらかというとこっち側ですが。事務所が嫌いというよりは現状批判をする際、メンバー批判よりはよほどましだという理由もあって)への反動的抵抗言説ぐらいにしかとらえていません。実際某ファンサイトでもまともに相手にされていないんじゃないですか。どっちかというとアンチ事務所の工作員に見えるぐらい(笑)。

3万円イベントについては、どうなんでしょうかね。まあ今回は「クリスマス」ということでそっちだけにした、というのは理解すべきなんでしょうけれども。安倍なつみや松浦亜弥の活動がディナーショーみたいなのを主とするようになったら私はついて行けないです、経済的に。ちなみにFCだけでやっていることなので、私が口を出すことではありませんが、娘。ハワイツアーも私はあまり好意的ではありません。どちらも資金稼ぎとして必要だ、といわれればどうこう言える筋合いのものではありませんが。もっとも加護ちゃんも秋にはアンダー1万円のイベントをやっているのだから、今回のイベントだけを取りざたすべきではなかったですね。ただ+7000円の特別プログラムだとか、良い印象を持ちにくいことが今回のイベントにはいろいろあったのでつい筆が滑ってしまいました。


追記

「事務所が儲かっているからいいんだ」言説って有害なのかなあ、というのもあります。別にいわせとけばいいやん、としか正直思わない。事務所自身がそういう考えなのは困りますが(でもまあ、そうでしょうけれど)、ファンサイドで「事務所ファン」みたいな輩がいたって共感のしようもないけれど、別に私は腹も立ちません、それ自体の言説構造としては。もちろんそこから派生して、事務所は立派なのに、所属タレントが駄目だから、とか、アップフロントから離れた奴は裏切り者だ、とか言い出すと話は別ですが、それは言説構造としては別のものであって、そういう言説は別個批判すべきことだと私は思います。

「事務所が儲かっているからいいんだ」言説を唱える人がファンサイトで席巻したからといって、事務所がつけあがるとも思えませんし、逆にそういう言説を「鎮圧」したところで、事務所が考えを改めるとも思えません。仮にCDだかDVDだかの売上が数百枚が上がっただけでも「大成功!」と言ったって別にいいじゃないですか。いちいち何かにつけて惨敗だ何だと言っているのと比べて、こちらだけが特に悪質だとは思いませんけどねえ。まあ私はそんなので「大成功!」とも思わないし、共感も賛同もしませんが、単に読み飛ばすだけです。

あるいは例えば握手会でCDを大量枚買いさせて、CD売上をアップ・維持するのだって、私は好きでもないし、評価もしませんが、そこに金をつぎ込み、握手して喜ぶ様をレポートし、売上のアップ・維持をファンが言祝ぐのも「言説としては」さして有害とも思えません。それしか能がない事務所にはうんざりですし、そういう事務所の(無)戦略を批判する言説のほうに私は遙かに共感しますが。

投稿者 althusser : 2009年01月02日 12:57

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コメント

こんばんは。
レスしていただき、ありがとうございました。

はたのさんのお考えは良く分かりましたが、我々が今本当に問題にしなければならないのは、一部のファン界隈(巨大掲示板?)での勝ち組or負け組的言説よりも、あまりにも世間と隔絶された現状の方だと私は感じております。
中澤さんの歌の歌詞に準えると勝ち組or負け組という区別自体するべきでは無いのでしょうが、昨年の娘。は売り手側が積極的に活動状況を発信してさえいれば勝ち組になれたかも知れませんし、里田さんとは全く正反対の活動をしていた安倍さんだって、将来の活動への基盤を築いた上に高い評価を得た事で実際には勝ち組に入るのかも知れません。

ちなみに「事務所が儲かっているからいいんだ」は、正直に言って個人的にはもうどうでも良いとも思っているんですけど、(これとは確かに別のものではありますが)ウチの大切な人は未だに事務所信者から「アップフロントから離れた奴は裏切り者だ」と思われているみたいで、何らかの形で奴らに邪魔でもされちゃかなわんなぁと思ってます。

投稿者 アンジェラス : 2009年01月03日 02:48

結構面白い(大事な)話なので、さらに話を引き継ぎます。ご面倒でなければおつきあい下さい。
 「我々が今本当に問題にしなければならないのは、・・・あまりにも世間と隔絶された現状」というのは話としては分かるのですが、ではそれを「言説」の力でどうすることが出来るのでしょうか。事務所は事務所の論理でやっているわけで、まあもしこの事務所がファンの声を聞く事務所なのなら直接手紙をしたためるなどすれば何か動くかも知れませんが、ブログ・ファンサイト掲示板などでその「現状」を憂いてみたところで事務所の戦略を変える力となる可能性があるようには思えません。
 「言説」の力で変えうるのは言説構築物のみであり、ファンの輿論もその一つですが、そのファンの輿論と事務所の戦略とが結びつく見通しが私には見えてきません。そしてそうである限り、単なる愚痴にしかならないように思います(もちろん単なる愚痴は私は大量にこぼしまくっています)。
 たとえ微力であっても言説(一つ一つのブログの記述)が直接変えうるのは私は文化的な価値基準・文化的ヒエラルヒーのほうだと私は思っています。そしてテレビに良く出ている人が、テレビに良く出るようになった人を「出世」だ何だと持ち上げ、それでそのタレントの価値が作られたかのごときある種のテレビ中心の文化ヒエラルヒーを私は好みませんし、それとは違う文化的価値の存在をうたいあげたいのです。
 それはモーニング娘。ファン、「ハロプロ」ファンとはまた違った位相での私の文化的スタンスなのです。もちろんテレビにも評価すべき作品は数多くありますし、そこは具体的に一つ一つ評価をしていかなければならないわけですが。そしてそういう私の文化的価値観に近い人・作品を私は特に「ハロプロ」内でも応援しているつもりです。
 「裏切り者」云々は件のファンサイトの事務所信者の「親玉」さんは言っていないんじゃないですか?まあほとんど読み飛ばしているので、分かりませんが。チケットが売れているから問題なし、握手会でも何でもCDが最低枚数売れればOK、という主張と「裏切り者」云々は同じ事務所信者といっても別の心性の気がします。まあ人間的には結果的にはかぶるかも知れませんが、自称「芸能事情通」(事務所の仁義とやらを価値化する)の人か、清純アイドル信奉者(事務所の言いなりに見えるアイドルが大好き)が「裏切り者」言説を生産する可能性はあるとは思います。件の事務所信者さんの真意はさっぱり分からないので、もしかするとこうしたものと繋がるのかも知れませんが、現段階では何とも、といったところです。

投稿者 はたの : 2009年01月03日 03:40

こんばんは。
私も大事な話だと思いましたので、トラックバックで送らせていただきました。
書きたい事が沢山ありまして、それを一気に書こうとしましたので、支離滅裂な文になっているかも知れませんが、読んでやってください。
個人的には“テレビ出演=勝ち組”みたいな言説が、ファン界隈で広まっているようには感じません。
逆に、最近若手組のテレビ露出の機会があまりにも少ない事に、何か不信感みたいなものを多くのファンの皆さんが持たれていると言うのが、実情ではないでしょうか?

余談ですが、先日ウチに従兄弟夫婦(共に非ハロプロファン)が来た時に、
○最近モーニング娘。をテレビで全く見ない。
○フットボールアワーの岩尾さんのファン発言とIQサプリを通じて、最近初めてBerryz工房の存在を知った。
○きらレボの月島きらり役と、MilkyWayの真ん中で歌っているのは、モーニング娘。の子だという事は知っている。
と話していたんですけど、これでもまだ世間ではましな方の反応だと思いますよ。

投稿者 アンジェラス : 2009年01月04日 21:53