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2010年09月12日
■ 「私の頭の中の消しゴム」
ブログへの更新意欲を失ってだいぶん経った。その分Twitterにいろいろ垂れ流しているわけだが、ある程度まとまった文章を書こうという気にはならなかった。安倍なつみ出演の舞台「リトルショップオブホラーズ」、モーニング娘。出演の「ファッショナブル」もスルーしてしまった。特に「リトルショップオブホラーズ」は書きたいこともあったのに。安倍なつみのバースデーライブまでスルーしてしまった段階で、もはやブログを更新することは出来ないのではないか、と思った。そのぐらい「インターネット」と「ハロプロ」という組み合わせに嫌気がさしていた。モーニング娘。を、インターネットにおいて少しでももり立てようという気がなくなった。モーニング娘。メンバーブログにコメントすることさえなくなった。
そんな荒んだ気持ちの中で、再びブログを更新しようという気になったのは、ひとえに高橋愛の演技である。朗読劇「私の頭の中の消しゴム」。準備期間もさほど長くはなく、また朗読劇という限られた表現形態、どの程度期待して良いものかと多くのファンが思っていたことと思う。後出しもいいところだが、私はしかし、密かに期待するものはあった。「ファッショナブル」よりも実を言えば期待していた。理由は自分でもしかとは分からない。
まず最初に断っておく。私はこの作品の物語自体は評価していない。三流昼メロドラマレベルだ。「ファッショナブル」も大概だと思ったが、この作品は、みる前から、全く期待はしていなかった。恋愛ドラマにおいて「死」をちらつかせる手法は全く持ってあざとい。もちろんそういう設定に乗ってもなお、一定の工夫というのはあるもので、この作品においても結末にはちょっとしたひねりがある。しかしそれを覆う前提が、あからさまに観客に涙を流させることを目的としているために、あざとさの印象が先に出てしまう。
この作品で見るべきは役者の演技であり、またそれで十分なのだ。「朗読劇」という限られた表現の中で、ほぼ声と表情だけで勝負をする。そうした役者の「戦い」を堪能する。そういう舞台なのだと思っていた。
序盤。ちょっと勝ち気な女の子。ぶっきらぼうな男性に出会い恋をする。勝ち気さ、そして恋心。問題ない。及第点。コミカルなシーンが何度か。余計な演技をせずに、さらっとかわいく。それでいい。そして幸せな結婚生活。夫の自分を捨てた母親への憎しみを無くさせようと献身的に尽くす。高橋愛ならこのぐらいはやるでしょという演技。
中盤。自分の病気を知り苦しむ。時折ヒステリックな叫び。時間が経つにつれて少しずつ激しさが増す。こうした激しさは、今までの彼女の演技ではあまりなかったものだ。想定の範囲内ではあったが、しかし、やはり演技において非凡なものがあるのを確認する。
終盤。病状が進行。記憶がどんどん失われ、精神的に子どもに返っていく。美しく、かわいく、幼く、それだけに悲しく、残酷。積極的な演技をしてはこうしたものは出てこない。むしろどんどん引き算をしていく演技。それが出来ている。すごい、と思った。「素晴らしい」という評はこういうときのために取っておくべきなのだ。高橋愛のこれまでの演技を「素晴らしい」と評さずに良かった、と思った。
記憶が失われ、仕事に出かける夫を見送るときに、いう言葉。「行ってらっしゃいカズヤさん」。カズヤというのは夫と出会う前に付き合っていた不倫相手の男性の名前。新しい記憶から失われる、強い印象のある記憶は残る。この記憶忘却の順序の中で、「前の男」の名前を呼ばれる夫の苦悩。そんな残酷きわまりないシーンで、しかし「カズヤさん」と呼びかける高橋愛の笑顔の無邪気なこと。目には生気はなく、どこかしら眠たそうで、相手に依存しきっていて、まるで赤ん坊のようなほほえみを浮かべて。
夫の前から姿を消して、施設で過ごす。症状は進み、記憶はほぼ失われ、精神的な死を迎えつつある。その場所を夫が見つけ、再会する。呼びかけるが帰ってくる返事は「初めまして」。そしてひたすらスケッチブックになにやら描き続ける。そのときの高橋愛演じる女性は魂を抜かれている。うっすらとほほえみを浮かべているが、感情はない。感情はないのに、そのほほえみがとても悲しい。夫もまた無の精神をみるしかない。もはやつかみ所もない。かつて「カズヤさん」と前の男の名前で呼びかけられた記憶がよみがえるのみ。
その残酷で絶望的なまでの無のほほえみがあったればこそ、ラストが生きるのだ。もはや記憶を失ったはずの妻の書いていた下手くそな絵。それが、出会った頃の自分の姿であることに気づく。無になったはずの妻の心の中に、自分がいた。自分だけがいた。それがこの作品最大の見せ場である。
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コメント
はじめまして。突然のコメント失礼いたします。東京に住む30代の女性です。
数年前から安倍さんの歌が気になり出し、娘。に興味を持ちはじめ、心の中だけでですが両者を密やかに応援している者です。
実は随分前からこちらをちょくちょく覗かせていただいておりました。
私は はたのさんの独特な物の見方と文章がすごく好きで、最近更新が少ないことを少々残念に思っておりました。
はたのさんの文章から伝わってくる安倍さんや娘。達のライブの様子はとても面白く、私のように遠巻きに見ている者にとっては特にありがたい存在でして、いつの間にかこちらのサイトのファンのようになっていました。
娘。周辺の情報はネット上に色々な形であり、心がささくれ立ってしまうようなものも確かに多いなとは思います。ですが、できればそんなことに屈せず書き続けてほしいです!なんて突然のコメントで厚かましいことこの上ないのですが、ついお伝えしたくなってしまいました。
高橋さんの舞台のことでなく、ごめんなさい。
あっ、ちなみに。高橋さんの才能というか魅力を感じ始めたのも、はたのさんがきっかけです。はたのさんの「愛ちゃん、愛ちゃん♪」を目にするまでは、あまり興味を持ててなかったです。今は、まるでガラスの仮面の北島マヤみたいで面白い子だなぁと思います(笑)
それでは、長々と失礼しました。
投稿者 まぁる : 2010年09月12日 22:19