2008年11月28日
■ 「Cover you」
「紅白」も落選で、そのほかテレビ出演の目算もなく、いまいち意義がわからない状態になってきてしまっているモーニング娘。のカバーアルバム。一般企業風に言えば「営業」と「製品開発」の連携が全くとれていない、という感じ。「営業」サイドの目算が全くないのに「製品開発」サイドの思いだけで製品を作っちゃった、という。伝統的にカバーとか好きな事務所だったからなあ。「Folk Songs」とかなんか童謡を歌ったアルバムとか売れないのにせっせと作ってきた過去があるから、その流れと思えば理解はできる。もう少し営業的な目算があっての企画だと思っていたけれど、単にこれまでのこの事務所の志向を反復しただけだったのね。
それにしてももう少し阿久悠って「新しい」曲も作っていたのかと何となく思っていたけれど、完全に70年代の人だったんだなあ。収録曲一覧を見て、私になじみの薄い曲ばっかりだったので、ちょっと驚いた。それでもう少し曲の選びようがあったのでは?と思って阿久悠作詞曲一覧を眺めてみたが、思っていたより私のなじみ曲が少ない。世代ギャップを感じる。娘。ファンの世代分布からしても、阿久悠はやはりいかにも「古すぎ」たとしか言いようがない。
愚痴はそのぐらいにして、このアルバム、それでもガキさん(新垣里沙)ファンは絶対買いなさい。これを買わない人はガキさんファンとは認めない、そんなアルバム。「シンデレラ The ミュージカル」の王子役のガキさんの成長ぶりがそのままこのアルバムに出ている。
高橋愛とのデュエットで歌っている「街の灯り」。まんまシンデレラの役所。愛ちゃんが女、ガキさんが男。別のこの曲は男役、女役とかいらないけれど、そういう歌い回しになっている。そしてこの曲がこのアルバム中一番の出来。ガキさんの声量の豊かさには驚かされる。愛ちゃんはどこまでも繊細な表現。
ガキさんの見せ所はもう一曲、「ジョニーへの伝言」。楽曲としては本アルバム中一番の名曲。愛ちゃんファンとしてはこの曲は愛ちゃんに歌ってほしかった。そんな嫉妬心もわき起こるほど。これまたガキさんが朗々と歌っている。すごい。ただこの曲はオリジナルはもう少しけだるい感じの歌い方だった記憶があって、それがこの曲の良さを際だたせていたように思えるので、そのあたりの表現は今後の課題かなと思ったりもする。
愛ちゃんは「街の灯り」と五木ひろしとのデュエット「居酒屋」と見せ所の曲はいずれも「女役」。「居酒屋」じゃなくて、「勝手にしやがれ」を気っ風良く歌ってほしかったな、と思う。五木ひろしはそりゃ上手いのは確かだけれど、聞いていてむちゃくちゃ違和感がある。五木ひろし自体に嫌悪感をもっているファンも多いし(私はそれほどでもない)、そのあたりのファン心理ももう少し理解してほしい。
後は曲の善し悪しはそれぞれあるけれど、全体としてはまずまず無難な仕上がりかなと言うところ。ただ悪くはないのだけれど、誰に聞かせたいと思って作ったものなのかが見えてこない。ほんとうにカバーものをやりたくて仕方がない一群がアップフロントの中にいるのだろうな、としか理解しようがない。
一応ガキさんファンならずとも娘。ファンなら買おうよ、とは言っておく。アップフロントのカバー好きも理解できないけれど、「ハロプロファン」のカバー敵視もよくわからない。娘。たちが頑張って歌って、それなりの仕上がりになっているのは確かなんだから、それには乗っていこうよ、と思う。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://macmini/cgi-bin/blog/althusser-tb.cgi/931