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2008年05月07日
■ トゥーランドット再び
なぜか突然もう一回「トゥーランドット」を見なければならぬ、と使命感に駆られて、仕事が終わってから必死に会場に向かう。仕事場を出るのに微妙に手間取り、ぎりぎり間に合わない感じ。それでも今日見逃せば、もう見るチャンスはないだろうと思い、遅れて入るのを覚悟で会場に向かう。
チケット売り場に着く。当日券はふつうに売っているようだ。息せき切ってA席を注文。あまりいい席がありませんとか何とかゆったりと座席選びの相談をされる。いや、もう始まっているのだから、どこでもいいからチケットよこせ、といいたいのを堪えて、「あ、どこでもいいです」と極力やんわりという。
案内された座席は、なぜか高校生の集団の隣だった。他に空席は結構あったのに、なんで、いちいち隣に人がいる席を売るかな。しかも隣が女子高生だし。あ、相談に応じなかった私が悪いのか。うーむ。こっちは走ってきたので、汗くさかろう、そんなので隣に座られては彼女が可哀想だ。というので本当はそういうのは嫌いだが、一席あけて座る。「ドリーム」(指定されていない席に勝手に座る行為を指す隠語らしい)って奴ですか?許してください。ていうか、私の行動って、お・と・なとして間違っていないよね。
席に座ったときにはすでに劇は始まっていて、トゥーランドットに求愛したさる国の王子が処刑されるシーン。まあ、1回見ているから、ここから見ても大して困りはすまい。なっちこと安倍なつみもすでに登場しているとはいえ、それほど見せ場もまだなかったはずだし。
いやいや、今日は安倍なつみを見に来たのではないのだ。芝居全体を見ようと思ってきたのだ。A席にしたのもお金をけちっての話ではない。舞台全体をゆったり見渡すのだ。
そういう気持ちで見ていると、また舞台の見え方が違う。前回は正直言って、なっちの演技だとか歌だとか、表情だとか、そっちに必死で、あまり舞台の作り出す世界に入っていなかった。今日、それをあらためて実感した。今日の私は純粋に舞台を楽しむ高尚な趣味人なのだ。なっち大好き。
台詞回しはともかく、歌に関してはやっぱりアーメイ、上手いわ。声に力がある。歌も台詞の一部ととらえると、歌詞が微妙に聞き取りづらいところはあるのだが、歌としての完成度はさすがに高い。
なっち、ちょっと声が不安定。まあ、泣きながら歌っているシーンなので、それが正しい演技なのかもしれないけれど。でも歌詞は明瞭、きちんと台詞として聞ける、し、アーメイには及ばないかもしれないけれど、やっぱり上手い。なっちに「がっついて」いた前回よりも劇の世界に入っていた今回のほうがさらにぐっとこみ上げるものがあった。
生オーケストラの音はあらためていい。先日のモーニング娘。コンサートの貧弱な音響を思い出す。トゥーランドットA席7000円、モーニング娘。コンサート6800円、うーむ。クラシックコンサートとモー娘。コンサートなら、一瞬のためらいもなくモー娘。コンを選ぶ、文化資本ありまくりな私でも、ちょっと考えさせられるものがある。
幕間、ロビーに貼ってあったポスターを見ながら、話に弾む若い女性二人組の話を盗み聞きする。
「あー、やっぱりあれ安倍なつみやん」「アイドルやからもっと声が甘いかとおもってた」「顔可愛かったな〜」「なんか声だけ別人かと思た」「モーニング娘。の時は歌うまいという印象はなかったけど」
ネットあたりでさんざん読み飽きた定型的な感想をありがとう。それでもなぜか無茶苦茶うれしいのはなぜ?
劇後半が少しだれ気味だという印象は今日も変わらない。高校生たちもすこし飽きが着始めているようなそぶりを見せ始める。なっち演じるリューの死後、もとい悪役ワン将軍が自殺した後、少し話に緊張感がなくなり、いつ終わるか、いつ終わるか、という雰囲気になる。たしかに「悪者」をやっつけた後、直ちに世の仲良くなって万歳とはせずに、荒廃した国の姿に苦悩するというのは、話の展開としては正しい。たとえばガミラス星を崩壊させた後に苦悩する宇宙戦艦ヤマトの乗組員の心境、ですか。やっぱりこの部分は苦悩するトゥーランドット演じるアーメイの日本語がたどたどしいのが説得力を損なっているように思う。
それでも高校生たち、3階席故に舞台の前方が見切れる場面では身を乗り出してみようとしたり、結構劇を楽しんでいたようだ。もっとも席から身を乗り出すのはマナー違反なんだけれどもね。まあ、おじさんは大人だからそんなことには目くじらは立てないよ。どっちみち、見切れる部分を見損ねたって、劇の内容理解には差し障りないことがわかっているしね。そもそもそこにはなっちはいないし。あ、それはどうでもいいのか。カーテンコールではとてもうれしそうに拍手して、手を振ったりしていた。
いずれにせよ、若い君たちが舞台を熱心に見てくれていたことが伝わってきて、おじさんはうれしかったのだよ。最後の高校生たちが感想を言っている。女の子「早乙女太一、よかった」。ま、女の子ならそんなものだろうね。で、野郎ども、もといお坊ちゃんたちの感想は?「アーメイ、かっこよかった」。この糞がきゃー、素直に「なっち可愛かった」と言わんかい。
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