2006年12月31日
■ ベストパフォーマンス賞
いよいよノミネート作品発表の過程で、本企画のなかでもっとも権威のある賞と決まった「ベストパフォーマンス賞」の発表。
ハロプロの各曲をアコースティックな演奏をバックにハロプロメンバーが歌っていくという好企画のGyao、ハロプロアワー。ハロプロメンバーの意外な組み合わせにより、あまり日の当たらないメンバーにも見せ場を作ったハロプロコンサート2006冬エルダー組ライブDVD。歌手安倍なつみの魅力を引き出した安倍なつみライブDVD2作品。アイドル松浦亜弥の曲を歌手松浦亜弥として歌い上げた、いわば松浦亜弥の現人アイドルから脱する「人間宣言」としての2作品はNaked Songs DVDから。過去の名曲をハロプロメンバーがアコースティックに歌い上げる歌ドキ。最後に歌い手の緊張感から来る魅力が引き出されている「声(新垣里沙 Ver.)」がモーニング娘。コンサートツアー2006DVD二作品の中から唯一エントリー。
多彩な作品群の中から審査員一人の大激論の末、決選投票に残ったのは以下の作品。
- ふるさと / Gyao / 安倍なつみ&高橋愛
- Memory青春の光(ハロプロアワーVersion) / Gyao / 後藤真希&松浦亜弥
- 春の歌 / Hello! Project 2006 Winter Elder Club / 保田圭、松浦亜弥、大谷雅恵、前田有紀
- 夢の中 / 安倍なつみコンサートツアー2006春〜おとめちっくBank〜 / 安倍なつみ・飯田圭織
- 私はピアノ / 歌ドキ / 安倍なつみ
- 勝手にしやがれ/ 歌ドキ / 後藤真希
- CHA-CHA-CHA / 歌ドキ / 高橋愛
- フレンズ / 歌ドキ / 中澤裕子
選に漏れた作品の中からいくつかをピックアップしてコメント。
「セーラー服と機関銃 / 歌ドキ / 高橋愛」、CHA-CHA-CHAよりタイムリーな選曲であり、(CHA-CHA-CHAでは邪魔で仕方がなかった)たいせーが画面上にうろちょろしないという強みもあったのだが、この曲を高橋愛が歌うと、そのライバルは長澤まさみでも薬師丸ひろ子でもなく、来生たかおになってしまう。そうなると残念ながら楽曲の新たな魅力を引き出すというのにはいささかハードルが高くなってしまった。
「待つわ / 歌ドキ / 中澤裕子・前田有紀」、二人の異なる個性がぶつかり合い、どうなるかと期待させられたが、残念ながら両者の良さを少しずつ打ち消し逢っている印象を持った。前田有紀の透明感溢れるきれいな声と中澤裕子の少しハスキーで個性的な声とがこの曲に関してはいまいち調和しない。さらにいえば前田有紀の圧倒的な歌唱力と、中澤裕子の気迫溢れる存在感もあまり調和していない。結果1+1 = 0.8ぐらいになってしまったかな、と。もちろん両者のポテンシャルが元々高いので0.8でもすばらしい仕上がりになってはいるのだが。
最終選考に残った曲についての寸評。
「ふるさと」。安倍なつみが歌い継いできた曲だが、高橋愛と合わせることで、本来「ソロ」の独白曲だったものが見事に曲中で対話が行われ、この曲に対する深みを増した。この曲に限らず、ソロで歌うときの安倍なつみにはまだ「かわいさ」が残るが、この曲を始め、デュオで歌うときの安倍なつみはじっくり語りかけるような優しさに満ちた歌い方に変わる。これがすばらしい。
「Memory 青春の光」。元々は多人数で歌うコーラスの美しい曲を二人で見事に表現し切れている。後藤真希と松浦亜弥という二人の歌手のポテンシャルの高さが現れ、つやのある後藤真希の声とハスキーな松浦亜弥の声という声質の異なる二人の調和もすばらしい。
「春の歌」。保田圭、松浦亜弥、大谷雅恵、前田有紀というハロプロ内の実力派が競演する一連の曲の中から、僅差でこの曲を選抜。4人とも上手い、隙なく上手い。
「夢の中」。かつてのモーニング娘。のライバル二人のデュオ。定番はかつて安倍なつみメイン曲だった「モーニングコーヒー」だが、あえて飯田圭織メインのこの曲を選んだその選曲よし。楽曲よく、歌唱よく、さらにモーニング娘。の歴史の重みを感じさせられるという贅沢きわまりない逸品。
「私はピアノ」。松浦亜弥の声はドライな魅力であり、後藤真希の声はウェットな魅力がある、と評するとき、安倍なつみにはウェットな歌唱とドライな歌唱、二つの歌唱をもっているといえる。そしてこの曲に関してはそのハイブリッドな魅力がよく出ている。さびの盛り上がる部分では甘く艶のある声で歌い上げ、それ以外の部分はやや低めのドライな声で。その調和がすばらしく、抑圧された激しい感情を歌い上げたこの曲を見事に表現し切れている。
「勝手にしやがれ」。男の歌を女性歌手が歌うととてもかっこよいことがある。そのかっこよさが遺憾なく発揮されている。そしてさらにまたかっこいいだけでなく、これがまた問答無用に可愛いのだ。何でこんなに可愛いのだ、というぐらいに可愛い。かっこよくて可愛い、このバランスの中に後藤真希本来の「エロ」さがにじみ出てくる。今のシングル曲のなんちゃってセクシー路線なんて邪道だ!と叫びたくなる、後藤真希本来の魅力に溢れた作品。
「CHA-CHA-CHA」。高橋愛は可愛い。その絶対性をただただ感じ取るべき作品。その絶対性を感じ取るためには余計なノイズがあってはならないのだ。そのために高橋愛の癖のない歌唱力が効いてくる。高橋愛の歌のうまさなど空気のようなものでよいのだ。当たり前のように上手い。そして絶対的に可愛い。しかしたいせーというノイズだけはいかにも余計だった。残念。
「フレンズ」。この曲をハロプロメンバーで歌うとしたら、この人しかいない、という中澤裕子。その出会いの必然性。感情が先走り、やや不安定な歌唱、少しハスキーで個性的な声、気っぷの良さ・勢い、中澤裕子の個性が遺憾なく発揮されている。
最終選考に残ったこの8作品の中からベストパフォーマンス賞に選ばれるのは果たして・・・。
MCがゆっくり前に進み出る。
(封印された封筒を手に)結果はこの中に既に書かれています。
(はさみを取り出し、ゆっくりと開封する)
(もったいぶった声で)発表します。
2006年ハロプロ大賞ベストパフォーマンス賞に輝いたのは・・・。
(結果を記した紙に目を落とす)
(驚いたような、少し拍子抜けしたような、微妙な表情)
なんと、最終選考に残った8作品同順、同時受賞です!
(場内、どよめき。「なにが「ベスト」だ!という怒号)
おや?審査委員長からのメッセージが書かれています。「35作品の中から8作品まで絞り込んだんだ。十分だろ。そもそも最初のエントリー作品が多すぎるんだよ。もう疲れたよ、勘弁してくれよ。ということで、本賞は「ベストパフォーマンス賞」あらため「グッドパフォーマンス賞」と名称を変更する。それなら文句ないだろ」、だそうです。
「開き直るな」などといった怒号から逃げるようにMC、舞台から下がる。騒然とした雰囲気の中、暗転。
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