2006年06月11日
■ キーワードはだれのものか
なかなかまとまった時間が取れないので、論点を思いつくままに書き連ねる。
私はある個人が芸能人なり著名人なり、そうではなくても何かしらの表現物の作者およびその表現物に対して、辛辣な批評を行い、それを「誹謗中傷」だと受け取る人が現れても、それはそれで仕方がないと思う。不満があれば、不満に思う人が自ら場を設けて反論するよりないことである。もっとも表象されたものではないゴシップネタのようなものはまた別の評価となるだろう。
重要なのは、その批評を行ったものが誰なのか、その批評文の文責が明確なことである。「誰」と言っても本名が明らかになっているとかそういうことではない。筆名であれ、ハンドルネームであれ、場合によっては書き捨てのための仮名であっても、その内容の責任の所在ははっきりしている。書き捨ての仮名で書かれた内容にはそれにふさわしい評価付けがなされるだけのことである。それもまた文章表現に対する一つの責任の負い方ではあるのだ。
その意味では、匿名掲示板に書き連ねられる内容もまた、文責ははっきりしているのであって、それは確かに掲示板運営者とは別の存在である。もちろん掲示板運営者には運営者としての責任は問われるし、現に負っている。しかしそれは書き込まれた内容に関する文責とは別の責任である。その意味で匿名掲示板運営者が、自分たちはインフラを提供しているにすぎず、内容には関知しない、と仮に言うのであれば、それはそれで筋が通っている(そうであるからにして、例えば「電車男」の著作権を2ch運営者が主張することもなかったはずだ)。
はてなのキーワードはそうではない。このシステムは複数の者が一つのキーワードを共同して編集するものであって、個別の編集者が今あるキーワードの内容に関する責任を負うのは難しい。そしてまた権利を主張することもできない。実際、はてなユーザ以外の者がはてなキーワードを見れば、その編集履歴は隠されており、単に「はてな」のキーワードとしてしか認識されない。またはてなダイアリーガイドにおいても明確にキーワードの知的財産権ははてなに帰属するとうたわれている。こうした意味においてキーワードの内容を語っているのは「はてな」自身でしかあり得ないのだ。キーワードに特定の主張が掲載されたとする。その主張が掲載されている限りにおいて、その主張は「はてな」が語っている。果たしてはてな運営サイドにはその自覚があるのか。語り手としての責任を全うする覚悟があるのか。
そしてはてなに登録された数多くのキーワードはネットの検索エンジンなどの働きによって、多くのネット利用者のアクセスをはてなに引き入れる役割を負っており、それ自体は全く正当なことであるが、運営者である株式会社 はてなはそれを元に収益を上げている。その意味ではてなは確かにキーワードを所有しており、その所有権を行使しているのだ。
権利のみを得て、責任を果たさないとすれば、「搾取」とのそしりは免れがたい。はてなはキーワードの所有者としての権利を主張し、かつ行使しているはずだが、一方でキーワードの語り手としての責任を果たしているのだろうか。その責任をユーザ相互の「意見交換」を尊重するといった美名の元に投げ出しているだけではないのか。
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