2006年05月03日
■ 時代名称
せっかく盛り上がっているところに水を差すかもしれない。
青空の10人というのが盛り上がっている。対比されているのは黄金の9人だという。
はて?黄金の9人という言い方がそれほどメジャーだったっけ?「黄金期」だとか「黄金時代」だとか、あるいはその時期を崇拝するファンを「黄金厨」だとかいうのはよく知っているが、「黄金の9人」という言い方はそれほど耳慣れなかったので、はて?と思った訳だ。
確かに黄金期というのは「ザ☆ピ〜ス!」を歌っていたときの衣装やそのときのメンバーの輝いた雰囲気から名付けられたものだ。そして「ザ☆ピ〜ス!」を歌っていたのは確かに9人だ。しかし「黄金期」はその当時流通していた名称ではなかったはず。
その前の曲「恋愛レボリューション21」で中澤裕子が卒業をし、ファンの混乱の後、しばらく時期をおいてリリースされた「ザ☆ピ〜ス!」は売り上げ的には前曲を大きく下回った。それはリーダー中澤裕子を喪失したという結果であったかもしれず、少しずつモーニング娘。自体が飽きられてき始めていた兆候だったのかもしれない。いずれにせよ、「ザ☆ピ〜ス!」自体の正否の評価は、その当時は定まってはいなかった。
その後「Mr.Moonlight〜愛のビッグバンド〜」、「そうだ!We’re ALIVE」が少しずつ売り上げを下げつつも、楽曲的にまとまりを持ったものだと評価が固まりだし(とりわけ「Do it!Now」との対比において)、三部作の第一作として「ザ☆ピ〜ス!」の評価も固まったように記憶している。そうして「Do it!Now」で後藤真希が卒業をし、少しずつ「国民的アイドルグループ」としての地位が揺らいでいく中、過去を懐かしみ、称揚する風潮が出てくる中で「黄金期」という呼び名が出てきたのではなかったか(初出を知っている人がいれば教えてほしい)。
そこで指示されている「黄金期」とは狭義には確かに「ザ☆ピ〜ス!」の衣装の色に象徴されたネーミングであるように、それを歌っていた9人時代のことを指している。しかしそのネーミングで多くのものが懐かしみ、称揚したのはそれだけではなかったように思う。むしろ「LOVEマシーン」の大ヒットの後、4期の加入を経て一層メンバーがバラエティに富んだ活躍をし、「国民的アイドルグループ」としての地位を維持し続けた時期全体を緩やかに指したものであったように思うのだ。さらに少し意地の悪いまとめ方をすれば、中澤裕子卒業後、次第に売り上げを低下させ続けるモーニング娘。の凋落期の始まりを「黄金」と言う華やかなネーミングを冠することで最大限の抵抗を行った、という見方もできる。つまり「黄金期」とはモーニング娘。のある安定した時期を指したネーミングではなく、その表現自体がきわめて揺らぎを持ったものであったのだ。
そうした幅を含んだ表現であった「黄金期」を「黄金の9人」と限定し、それを称揚することはどこかしらに歴史を狭め、モーニング娘。に関わるものたちの記憶をその方向で書き換えてしまうものであるように思われてならない。
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