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2006年02月11日
■ 言説効果
仕事が全然はかどりません。頭の中が「くだらない」話でいっぱいで。
つらつら飽きもせずにネットで言説を追っているのだけれど、そういうのを見ていると根本的に違う二つの言説があって、両者は簡単には交わらないのだな、と感じる。二つの言説とはファンサイドとそれ以外、ではない。もっと一般的な次元でのお話だ。語る対象をそれが置かれた文脈の中で語ろうとする言説と、文脈から切り離されたいわば冷凍保存状態の対象として取り出して語ろうとする言説。
未成年の女性アイドルが喫煙しました。この事象をそのまま取り出して何かを語れば並ぶ発言など限られる。
- 未成年の喫煙は法律違反だ。
- アイドルはイメージを壊したら駄目だ。
- タレントが悪いことをしたら、一般人とは比較にならないぐらいいろんなところに迷惑がかかる。
そんなこと何も「この事例」で語らなくても、抽象的アイドルAで語れる話じゃないか。そんなことを語りたくて具体的な事件を「待って」いたのか?
そんな一般論とか一般常識とやらを自分のブログでわざわざ語る人というのはよほど人に説教でも垂れたいだけなのだろう。
で?だから?厳しい処分も受け入れろ?引退もやむなし?
そんな一般論で他人の人生が翻弄されるのを見たいわけだ。卑しい話だ。
そうですよ、彼女のしたことは法律に反していますよ、アイドルとしては明らかにやっちゃ駄目なことですよ、そしていろんな人に迷惑をかけていますよ、そしてそんなことは今彼女も、そしてそこに関わる人たちも、そして彼女のファンたちも、みんな分かっていて、そのことを噛みしめていますよ。それ以上にかれら(そして私たち)に何を知らしめたいのか?
具体的な状況は、もうこの瞬間に動いていて、そしてあなた(そして私)が発言をなした瞬間にもまた何かが動くのだ。そういう言説をあなたも私も形作っているのだ。そして彼女はもうすでに無期限の謹慎という罰を受け、CDの発売中止という結論も出され、多くの関係者に迷惑をかけまくり、多くのファンを失望させ、そしてそのことを否応なしに思い知らされているわけだ。その状況の中で、何をどう動かしたいのか。己の発言にどういう力を込めさせたいのか。あるいは己の発言がどういう力に荷担することになるのか。それを何も考えないではき出される言葉とは何なのだ。
今現実に彼女が置かれている状況において、さらに一般論としての彼女の行為の否定性を語ることの言説効果を想像できない程度にしか状況把握が出来ず、あるいは想像力が働かないのなら、その話題には触れるべきではないのだ。
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