重層的非決定?

« プラチナ9DISCO大阪公演 | メイン | 染められない »

2009年05月10日

■ あなた色

「三文オペラ」大阪公演千秋楽無事終了。

カーテンコールは何回あっただろうか。そのうちの一回、デーモン小暮閣下が突然「この中になっちファンはいるか?」と問いかける一幕があった。特に前方中心に固まりで必死で手を挙げる一群。そのほかにもバラバラといて、意外と結構潜んでいるものだと思った。その安倍さんの挨拶、「今日はなっちじゃなくて、ポリーだよ」とかいって、いかにもポリーっぽくアホっぽくおどけて見せた。それまでは安倍さんらしくきまじめに遠慮がちに振る舞っていたのが一転。いやはや役者だ。

高橋愛のWebトークで、新垣里沙とともにこの「三文オペラ」を見に行った感想を語っていたようで、まずは「大人でしたね〜」。「みっつぃとか大丈夫かな」。ま、それはそう思うわな。客席を映す演出とか色々興味深いとかも。そしてこの舞台を色に例えると、というところで愛ちゃんは「灰色」、ガキさんは「赤」。

なるほど、よく分かる。灰色はこの舞台の作り出す表面的な世界。皆が貧しく、燻っていて、薄暗い世界。しかしその中に生きる人々の心の中には強烈な執着が。その執着を色にすると「赤」。

人々が執着しているのは金、性そして生。道徳やら、制度やら、権力やらが全て欺瞞的で脆く、それだけに人々は真にリアルなものに執着する。

植民地戦争にかり出されて、様々なトラウマを抱えた兵士は、一人は女王陛下に見込まれ警視総監に、そしてもう一人は悪党の親玉になった。そして二人はその後もなお、「友情」で結ばれている。悪党メッキ・メッサーは警視総監に金を分け与え、警視総監はメッキ・メッサーの悪事を隠蔽する。「持ちつ持たれつ」。利害に塗り固められた友情。それでも二人はそれを友情だと信じる。

メッキ・メッサーと深い関係にあった娼婦は過去にふるわれた暴力にトラウマを持ち、メッキに対する憎しみと愛情とを併せ持つ。そして金のために二度もメッキを裏切る。裏切ったのは復讐のためか、あるいは金のためか。

金、性、生に振り回されもがくメッキ。そしていよいよ処刑されるというところになって、突然女王陛下の、いや脚本家のというべきか、何の必然性もない思いつきのようなもので恩赦が下り、生を得て、さらに貴族に叙せられ、多額の年金をもらえることになる。いったいメッキが執着したものは何だったのか。メッキが生きた世界とは全く無関係な世界の論理で、彼は全て救済される。自らが執着したものの価値の軽さ。メッキの生還を喜ぶ人々の空疎な笑顔。メッキが現存すると信じ、確かにその中で生きてきたはずの世界は消え失せていた。その時のメッキの目に映った色は何色だったのだろう。

「白」だと私は思った。空白。登場人物の白塗りの化粧、そしてラストシーンのキティちゃんのお面、色々な顔を持って生きていても、それらは全て仮面。そして様々な物事に執着し、生きてきたリアルな世界も、最後には全て白紙にされてしまう。灰色の世界とその中で蠢く赤い血潮を最後の最後に全て白く塗りつぶしてしまう。真に暴力的なのはまさにこの「白」。様々な色を持ったリアルな世界を遮断し、キティちゃんのお面のように無表情にその世界を観察する、そんなパラレルワールド。

会場にはタクシーで乗り付ける人多数。公演終了後にもタクシーがずらり。もちろんモーニング娘。コンサートでは見られない光景だ。

投稿者 althusser : 2009年05月10日 00:16

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://macmini/cgi-bin/blog/althusser-tb.cgi/1078