2009年03月31日
■ 夢なら醒めないで
今ツアー、高橋愛ファン待望のソロ曲「夢から醒めて」。
私は、最近の更新を見ると忘れられそうな気もしなくもないが、第一義的には安倍なつみファン。というところもあって、この曲に対する思いは少し違う。
「夢から醒めて」はGyaoドラマの主題歌。同じくGyaoドラマの主題歌として安倍なつみの「たからもの」がある。いずれもつんく♂プロデュースではない曲、そして「いつものハロプロ」曲とは違う伸びやかな曲調、ヴォーカルの「素」な感じの声がストレートに堪能できる曲。というので、私の中ではどうしても比較対象になる曲。
本来曲とかその歌唱とかを比較して、まして勝ち負けを決めるなんてことは粋じゃないのだけれども、あえてその粋じゃないことを書こう。
「たからもの」と「夢から醒めて」、正直言って安倍なつみ「たからもの」の方が断然いい、と思っていた。
まずは曲の背景。
「たからもの」のドラマは神戸震災をテーマにしたものだった。大好きな父親が震災でなくなった、それで閉ざされた心が再び動き出す流れを追ったドラマ。名作だった。地上波で流しても良かった、名作ドラマだった。そしてそのバックグラウンドに流れる「たからもの」。
何も変わらないものに 囲まれながら
たからものは 知らぬ間にどこかに行ってしまった
やさしい かなしい 思い出を残して
ドラマの世界と歌の世界がしっかり対応していて、歌を聴けば自然とその背景にある様々なものが浮かび上がってくる。人の心の傷、思い出、そして未来への希望、そうしたそれぞれに重いテーマがしっかり胸の中に刻み込まれ、反芻される。
一方「夢から醒めて」。ドラマ自体はよく分からないドラマだった。「エコ」がテーマの「シュール」なドラマらしいのだが、エコがテーマらしいことは分かるけれども何が「シュール」なのかも分からないし、結局何を訴えたかったドラマだったのかもよく分からなかった。高橋愛が出ている、という意義しかないはっきり言って駄作だった。
曲自体はいい曲だ。なのにその背景にあるドラマがそれをスポイルしてしまっている。なまじ背景にそんなドラマなどない方が良かった。しかし私の記憶の中ではこの曲を聴くとあのドラマがよみがえってしまう。全く余計な風景が。
そして歌唱。
歌い手のストレートな感情が表出されやすいこの手の素朴な曲に対しての歌い手の表現力。こういうのは安倍なつみとか中澤裕子とかが秀でているように思う。歌唱における「気合い」派。一方高橋愛とか後藤真希は私の中では「技巧」派。特に高橋愛はフェイクっぽく歌ったりそういう場面で特に力を発揮するタイプ、私の中での分類はそう。
例えばモーニング娘。。初期曲「ふるさと」。この曲も同じような意味を持っていると私は思っていて、この曲を高橋愛は数度ソロで歌っている。FC向けの企画DVDで歌ったのは私は知らないのだけれども、2005年モーニング娘。コンサートで歌われた高橋愛ソロ「ふるさと」。高橋愛ファン絶賛のこの歌唱、私はDVDで見ただけだが、その限り、「そんなにいいか?」と思った。同時期の高橋愛の歌唱ならばその次のツアーで歌われた田中れいな・亀井絵里との「ラストキッス」のほうが断然良かった。高橋愛に合うのは断然こちらだと思った。
2006年、この「ふるさと」を高橋愛と安倍なつみがデュオで歌った。果たして私の中では安倍なつみの「圧勝」だった。
「夢から醒めて」。私はこの曲は2007年に初めて生で聴いた。保田圭・矢口真里とのディナーショー。高橋愛(という人)を「感じる」という意味ではいいと思った。しかし高橋愛の芸を堪能するという意味では最高だとは思わなかった。
そして今回のツアー。私の中での最高の高橋愛はソロパートがそれほど多いわけでもない「情熱のキスを一つ」の高橋愛だ。踊りとか衣装とか表情がエロくていい、とかそういうことじゃなくて(それは絶対的にあるのだが)、高橋愛の歌唱を楽しむという意味で断然こちらこそ高橋愛の力量がよく出ている曲だと思う。
しかし。福井夜公演での「夢から醒めて」。良かった。とても良かった。
黄色に染まる会場、安倍なつみなら感激のあまりに崩れるこの場面(それはそれで安倍なつみのパフォーマーとして秀でたところだ)で、しかし高橋愛は毅然と歌いきった。(おそらく)万感の思いを胸に、それを歌声に乗せて、聞かせてくれた。気合いと、技術と、そして歌手としてのプライドが見事に調和した歌唱だった。伸びやかな声に繊細な感情とほとばしる気合いを込めて。
毎度の月並みな表現ながら、本当に夢の中にいるようで、その時間がもっとずっと続いて欲しいと願うも、その時は駆け足のように過ぎていき、そして何事もなかったように次の曲「Take off is now」でいつものごとくとてもエロティックなパフォーマンスを披露する高橋愛がいた。
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