重層的非決定?

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2009年02月12日

■ 「Q.E.D.」賢者の遺産

偶然にかける恋と、必然を作り出し、守る愛。

今日のNHKドラマQ.E.D.証明終了「賢者の遺産」の原作とドラマの違いを表現すれば、上のようになるだろうか。

主人公水原可奈がさる古びた屋敷でタイムスリップする。行ってしまった先は昭和9年。そしてそこで帝大に通う青年と出会う。

その青年と心を通わせつつ、現代に心を残す可奈。現代に戻ることが出来るのか、いったんはこの時代で生きていこう、とまで決意する。しかしまもなく現代に戻れるチャンスはやってきた。だがそのときは青年にピンチが。

可奈はチャンスを棄て、青年の元に駆けつけ、青年を助ける。戻るチャンスは途絶えた。このあとどうしようと途方に暮れる。「もし、もしよかったら」、言いよどむ青年。

まさにそのとき可奈は現代に戻るチャンスがまだ残っていることを発見する。タイムスリップした屋敷がまだ健在だった。「私、帰る!」。いったんは駆け出しながら、もう一度青年の元に戻って別れの挨拶を。手を握り、あとは後ろを振り返ることなく現代に戻る。

現代。その屋敷の持ち主はあのときの青年だった。売りに出されたその屋敷を青年は買い、何十年もの間、何も触ることなくずっと守り続けてきたのだ。

原作。可奈が冒頭に屋敷にやってきたのは偶然だった。かつての青年(今は老人)はずっと守ってきた屋敷をあえて取り壊すことを決断する。そうすることで最後に可奈にあえるチャンスが来ることを信じて。老人は、あのときの可奈に出会えることを数十年間ずっと待っていたのだ。果たして可奈はやってきた。偶然の成就。偶然の機会を何十年も待ち、必然にした老人の想い。

ドラマ。老人は現代の可奈を知っていた。孫娘の剣道の弟子。そして可奈がタイムスリップしたその日に、屋敷の取り壊しを決め、可奈を呼びつける。可奈があの時代にやってきて、そして確実に帰れるように、その日が来るまで老人はずっと屋敷を守ってきた。可奈が無事に今の時代に戻ってきたことを確認し、老人は安堵する。老人はあのときに出会った可奈を数十年間ずっと守ろうとしてきたのだ。必然の成就。必然を何十年も守り続けた老人の想い。

原作とドラマのぶれの中に、両作品の深みが見えてくる。

原作は自分では読んでいないんだけどね。

投稿者 althusser : 2009年02月12日 23:12

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