重層的非決定?

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2006年12月25日

■ 幽霊言説

ある事象に関わる二つの立場があったとしよう。仮にそれをA,Bと呼ぶ。その事象について当事者意識をもって何かを述べるものは、A,Bいずれの立場に立って語っているのかが明らかであるというのが一般的だ。もっとも第三の立場というものも成立する。A,Bいずれの立場とも異なるCという立場を取る、それも可能だ。しかし「当事者意識を持って」いる限り、CもまたA,Bと同じ地平にある。ある事象の登場人物として直接は立ち現れてこなくても、Cもまたこの事象に関して一定の利害関係を担う隠れた登場人物としてそこにいる。

こうした「当事者性」を保持した語りとは全く別の言説がある。その事象のどこにも存在しておらず、あるいはその事象のどこにも関わらないことを暗黙的・明示的に語り続ける言説である。その言説には立つ場所がない。何の足場も持たず、ただどこからか漂ってきて、その場限りの言葉を投げ捨てる。その事象に関する利害関係はない(と主張する)、それ故己は客観的だ(と主張する)、そうして事象に関わる利害闘争には巻き込まれず、己の安全は担保にとって、事象に対して言葉を投げ捨てる。このような言説を「幽霊言説」と呼ぼう。

2chは匿名を基本とするが故にこの「幽霊言説」を生産し続ける。しかし匿名性が幽霊言説の本質ではない。ただ自分は事象とは直接関わらず、すなわちAともBとも独立の立場であることを表明し、しかるにCの立場性を説明もしないでいることこそがこの「幽霊言説」の構造である。

この幽霊言説は鵺のように立場を自由に移動させうる。ああいえばこういう、それが可能である。少なくとも正体を明かさず、あれこれいうのだから、まずはおまえは何者かを問うところから始めないと話が始まらないのだが、その正体を明かすことをひたすら遅延し続ける。時には法律だ、一般常識だ、それを振りかざして己の立場を明かさない。

不毛だ。疲れる。

投稿者 althusser : 2006年12月25日 22:25

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