重層的非決定?

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2005年09月26日

■ 24カラット

およそ一年ぶりに安倍なつみコンサートを見に行く。

以下、とてもささやかながら一応「ネタバレ」あり。

何となく気が急いて早い目に会場に着いたら、いかにもアイドルヲタクという服装をした人の群れ。何となくいたたまれなくて、まだ当日券の発売が行われていないことを確認して、早々に逃げ出す。24歳の(アイドル)歌手にこのようなファンがつく、というのはやはり凄いことなのだ、と改めて思う。

突然過去の記憶がよみがえる。今から10数年前、今の安倍さんよりも一つ若い23歳の(アイドル)歌手のコンサートに行ったときのことだ。

平日の夜のコンサートだった故であろう、背広姿のファンが目立った。その中に一人だけ、当時の言葉で言ういわゆる「親衛隊」の格好をしたファンがいた。とても浮いていた。いたたまれないほどに浮いていた。ちなみにそのコンサート、ほとんどの客は7割方の曲は座って聞いていた。声援もまばら。ひたすら歌を聴こうとしていた。アイドルとしての寿命をすでに終え、歌手としての曲のリリースもままならない状況の「バラドル」に残った歌手としての彼女のファンの想いに溢れたコンサートだった。そしてそれが彼女の最後のコンサートであった。

そんなほろ苦い思い出に浸りながら会場を一旦はける途中に、「安倍なつみ親衛隊」という縫い込みの入った衣装を着ているファンに出くわす。「親衛隊」、まだ死語ではなかったことに驚く。

関西将棋会館を冷やかしてから、一旦梅田まで引き上げ、ヨドバシカメラ、ソフマップで時間つぶしをして、歩いて会場に戻る。すでにかなり多くのファンが集まり出すと、当初見たいわゆる「濃い」ファンの密度が下がり、何となく安心する。

会場は2600人だかが入るということで、昨年の奈良での会場より大会場となるので、当日券ではかなり見づらい席になるのではないか、と危惧したが、ファミリー席を頼んだら、2階の前から2番目、ステージとの距離こそ遠いがとても見晴らしの良い席であった。ファミリー席ということで立ち上がること禁止、踊る人の頭の隙間からのぞいていた去年よりもむしろ環境は良かった。元々私は歌はじっくり聞いて、終われば拍手、という応援しかできない(し、10数年前はそれで通用していた)ので、一般席ではただ突っ立っているだけのはた迷惑な観客、ファミリー席が取れたのは良かった。ファミリー席はさすがに家族連れ、女性客が目につき、そしてロマンスグレーとでも表現するのが適当な「紳士」然とした客もいる。

とりあえずコンサートグッズ売り場を見る。恒例のDVDマガジンはとにもかくにも入手。写真は買わない。それよりも「役に立つ」ものをというわけで、抱き枕は残念ながら売っていなかったので(売っていても買わないが)、4800円の財布を購入。物自体は2500円ぐらいの革の財布にツアーロゴを刻印したもの、想像していたよりもまともなものであった。しかし考えてみれば、今使っている財布はまだまだ綺麗で買い換える予定など一切なかった。全然役に立たない。そんなグッズで計7000円の出費。

一曲ごとの感想など書けるほどの記憶力はない。ただ全体の印象として、音響が悪く、かなり聞き苦しかった。またハロプロ系のコンサートでは期待すべくもないが、コンサート独自のアレンジを施した生バンド演奏をバックにつけるぐらいのことは本来はして欲しいものだ。妹の安倍麻美のライブでも生バンド演奏をしていたと聞く。10数年前とはいえ、3000円で入れた先の(アイドル)歌手のコンサートも生バンド付きであった。いかにはロプロメンバーが歌、踊りに想いを持って精進しようとも、根本的な作りがこれではアイドルの顔見世興行の域を出ることはあるまい。

昨年は仕事のかねあいで、昼のみの鑑賞となり、やや不完全燃焼になったので、今年は昼夜連続して鑑賞。おそらく毎回そうだと伝え聞くごとく夜の方が声援大きく「盛り上がる」。

私も昼はいまいちしっくり来なかったが、夜が終わってようやくしっくりきた。ただしそれは会場の盛り上がりの差ばかりではない。私自身の構えの問題だ。

私は昼は昨年度の延長でこのコンサートを捉えようとしていた。ゲストという名の「仲間」と、楽屋トークと変わらぬ「ぐだぐだ」話を延々と続ける。そこに不思議なことに安倍なつみの世界が現れる。そしてその世界の中に安倍なつみの歌が響く。演者のいささかナイーブな心情がそのまま提示される空間。それを観客は「観る」のではなくて、共有する。

しかし今年のコンサートはそういう空間ではなかった。考えてみればセットリストからしても昨年とは違う。ゲストを交えた台本なしの素人トークがなくなり、代わりに挟み込まれたのが台本がきっちり決まっている「寸劇」。その場のその一瞬にのみ価値を持つ「空気」ではなく、きちんとトレーニングされ、例えばDVDなどとして切り出された際にも見せ物として価値を持つ芸。

その変化を、私は何となく、娘。コンサートの変遷に重ね合わせていた。といっても私はDVDで鑑賞しただけだが。福田明日香、市井紗耶香卒業コンサートの、各々仲間との別れをきちんと消化しないまま、各々複雑な思いをそのまま提示するしかなかったステージと、次第に恒例化、儀式化していくその後の卒業コンサート。それはやはり見せ物としての進化であったことは確かだと思う。安倍なつみコンサートもそれと同等の進化をしたのだと思った。

そのように理解してしまえば、なるほど今回のコンサートはとてもできがよい。カントリー娘。のパフォーマンスはとても良いし、なにより里田舞、みうなは体格良くて、ステージ映えする。しゃべりもそれなりにオチがある。とても安心してみていられるコンサートであった。

唯一心残りはカントリー娘。と一緒に歌っていた「愛車ローンで」。この曲にはとてもアイドルチックな振りが付いているのだが、それを完璧にこなす演者の映像の前に、その振りを微妙に気恥ずかしげに踊る娘。時代の中澤裕子さんの映像がちらついて、目の前のステージに集中できなかったことだった。

投稿者 althusser : 2005年09月26日 00:00

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